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本当に「三たて」がよいのか?

美味しく蕎麦をいただくためには、「三たて」が必須と言われております。
「三たて」とは、@挽きたて、A打ちたて、B茹でたての意味で、この3つの 条件が整って、はじめて美味しいそばになるというのです。
しかし実際には、この「三たて」に異論を唱える方も少なくありません。

以下に興味深い資料をみつけたので抜粋させていただきました。


「三たて」
仮に良質の玄ソバを入手できたとして、「三たて」を実行すれば最高の蕎麦が打てるか、といえばそうでもない。私も永らく三たてを信じて きた者であるが、界の達人にきけば、神の思召しとしか言いようがない微妙な時間差があるという。
ソバの旬は、新ソバが出回る11月から翌年の3月くらいまでといわれる。新ソバも時間の経過とともに質が劣化していくのである。
収穫したてのものが最高という理屈になるが、達人によれば2、3ヶ月おいて挽いた方がうまくなるものがあるという。
それは生産地や生産者によって決まってくるというものではない。現物にぶつかって実際にやってみないと判らないことである。
素人のそば打ちにとって「挽きたて」は垂涎の的である。自家に臼を備えるには金がかかるし、よい玄ソバの入手も簡単ではない。
せいぜい製粉所から粉を仕入れるくらいのところである。
しかし、達人によれば《挽きたては、粉の香りや味がバラバラになり、味がまとまらずちぐはぐになります。前日に挽いてうまいものもあれば、 一週間置くとうまくなるものもあるのです》(阿部孝雄『竹やぶの蕎麦』)ということである。

では「打ちたて」はどうか。
このステップは「捏ね」と「延し」の間の時間差が出来を微妙に左右する。
布恒更科の伊島さんは、あるとき、捏ねの途中で用件を思い出した。やむをえず作業を中断し、捏ね玉をビニール袋に入れておいた。
間を置いてその玉を延してみると、今までにないよい蕎麦が打てた。
ヒマラヤの麓、ネパールの高地のソバは赤い花をつける。その種は日本に移入され「高嶺ルビー」という名前で、主として観賞用に栽培 されている。平成9年、村屋東亭の渡辺さんはこの高嶺ルビーを蕎麦用に収穫した。その十割を賞味させていただいたが、甘味のある おいしい蕎麦だった。
渡辺さんの話によると、高嶺ルビーの十割を打つにはそれなりの苦労があった。コツは捏ねてからしばらく寝かせておくことだそうである。
しかし、翁の高橋さんにうかがうと、彼は《捏ねてからすぐ延した方がいい》といった。

最後は「茹でたて」であるが、そば屋には「包丁下は煮てはいけない」という口伝があり、切り終っても30分は待つのがよいとされている。
《すぐ茹でると釜の中に入れても沈まずに浮いてくる。粉と水がなじんでいないせいか、捏ねたときに含まれた空気のせいか、原因は 判らない。こういう状態ではシャッキッとしたツヤのある蕎麦にはならない。》
反対に半日以上も間を置くと、空気が全く抜けるせいか蕎麦が重たくなって、湯の中に入れても浮いてこなくなる(藤村和夫『手づくりの 蕎麦・うどん』)。蕎麦を茹でるには、ゆっくりと沈み、ゆっくりと浮き、また沈むという繰り返しが必要である。「蕎麦の三返り」 という口伝は、巧く茹る状態を表現している。
「茹でたて」は間を置かない方がいいに決まっている。蕎麦は茹で上がった瞬間からのびていくからである。しかし、水切りの間は 必要である。びしょ濡れの蕎麦では風味が感じられないし、つゆが薄まってはせっかくのつゆの味がボケてしまう。
さらしな蕎麦の場合は、さらに水切りをよくすることが肝要である。ソバの香りが少ないので、甘味の勝ったつゆとの絡みが決めてになる からである。
更科布屋会の案内書には、御膳そばと呼ばれる更科そばは「揚げたてを食べるという考えから離れて、むしろ少し水を切ってから 召し上がるのがおいしいといわれております」と書いてある。
ソバは自然の恵みそのもの、生きている。そしてそば切りの奥深さは限りがない。

【おいしい蕎麦を探す 太野祺郎 TGそばの会 株式会社展望社より】



食べ物の「美味しい」、「まずい」に正解はありません。
個人の味覚は千差万別。ご自身が食して「美味しい」と感じたら、それが美味しいものなのではないでしょうか。

それにしても、蕎麦の世界は奥が深い・・・


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